実行できる技術は単純なものであった

画家で詩人の辻まこと氏は趣味のスキーで次のように述べています。

いつでも流行の技術があって、理屈はうるさく、夜のスキー宿はケンケンガクガクだが、実行できる技術は単純なものであった。

 

高校生の頃、スキー部の合宿で民宿に泊まりました。夜の民宿の乾燥室。一般スキーヤーの大人達がスキー技術論争。高校生にはチンプンカンプン?。次の日ゲレンデでその大人達の滑りを見て、下手なことにびっくりした思い出があります。

 

2シーズン前、レッスン前にレストランで休んでいると隣のテーブルでは胸にゴールドネームプレートを誇らしげ付けた、二人のスキーヤーがコブの滑り方で技術論争。レッスン中にコブコースで二人の滑りを見たが、超下手でした。

二人の技術論争を聞いたいて感じたこと。

二人の技術論には根拠が全くありません。「スキー雑誌の記事に書いてあった。デモがこう滑れと言っていた。技術選のビデオを見て、自分で勝ってに解釈。」

 

今年、ノーベル賞を受賞した本庶先生はインタビューで次のようなメッセージ。

簡単に信じない 考えて納得いくまでやる

「研究は、何かを知りたいという好奇心がないといけない。そして、簡単に信じない。よくマスコミの人はネイチャー、サイエンスに出てくるからどうだいう話をするけれど、9割はうそで、10年たって残っているのは1割。まず、論文とか、書いてあることを信じない。自分の目で確信を持てるまでやる。自分の頭で考えて納得いくまでやる。」

 

2枚の写真をご覧ください。(撮影斜面は同じです。)

何故、同じ斜面で違う滑り方をしたのか?それは、雪質が違ったからです。

直滑降で滑った時の雪質はサンクラスト。このような雪質でターンするには、切り換えでジャンプです。レッスン前だったので疲れるのが嫌で直滑降で滑りました。結構、スピード出ました。但し、このような斜面で直滑降する時は安全に止まれるかどうかが問題です。この斜面は停止ゾーンが整地だったので比較的簡単に停止できるので直滑降選んだ。

三浦雄一郎氏のようにエベレストは直滑降できないがこれ位の斜面なら簡単です。

直滑降で滑る勇気の無いスキーヤー、又、ジャンプターン出来ないスキーヤーはこの斜面をどう滑るか。単純な技術をマスターしていると誰でも滑れます。

斜滑降→停止→キックターン→斜滑降→停止→キックターン。この繰り返しです。もし、この斜面がカリカリのアイスバーンだったら斜滑降の変わりに横滑りです。

パラレルターンで滑った時の雪質は、少しウィンドクラストしていました。新雪を滑ると多くのスキーヤーは弧を小さくして滑りすが、基礎パラレルターンの運動要領で滑った方が気持ち良く滑れます。ロングターンできない斜度、雪質ならばターン弧を小さくして滑ります。

 

スキー雑誌やレーシングキャンプ、デモレッスンでは最新テクニックの技術解説がメインです。その最新テクニックには根拠がほとんどありません。

いつの時代も滑るコースのシチュエーションが厳しくなればなる程、実行できる技術は単純なものです。

アンギュレーション代表 山藤和男